創刊のことば。
媒体ステートメントは、CAXO Journal が誰のために、何を、どう記録するかを公示する宣言である。本誌は、AI によって自社の収益構造そのものを再設計しようとするすべての経営者・ビジネスパーソンを「CAXO」と呼ぶ。
CAXO Journal は、収益進化AI を牽引する経営者と、その現場で働くすべての人に向けて、編集部が現場から運んでくる実装知のマガジンである。
ただし、本誌は、確立された手法を伝える媒体ではない。
なぜなら、収益進化AI には、まだ確立された手法そのものが存在しないからだ。書籍に書かれた経営理論を、そのまま自社に当てはめれば変革できる、という時代ではもう、ない。
だから本誌は、答えがすでに出ている問いを並べ直すような媒体にはしない。いま現在、AI Transformation の現場で何が起きているか。何が試されているか。何に躓いているか。どう前進しているか。その実践の、結論を急がない記録を残していく。
本誌の編集部は、AX for Revenue Institute に所属する研究者と実務者で構成されている。机の上だけで書く人間ではなく、毎日のように事業パートナーの現場に通い、AI Transformation の実装の真ん中に立っている人間たちである。
記事の形式は、大きく分けて六つある。編集主幹による論考、編集部が現場で観たことを記録するルポ、業界動向を解きほぐす分析、関係者への取材インタビュー、対談記録、そして公開情報を編集部が独自の視点で読み解いた事例観察メモ。形は違っても、目指していることはひとつだ。本誌を読んでくださる方の、AI Transformation の判断と行動に、現場の解像度を運ぶこと。
本誌が守ろうとしている、四つのルールがある。
一つ目。成功事例を作らない。「成功した」「成功する」という断言を、本誌の語彙から原則として外す。収益進化AI には、自社固有性がきわめて強い。だから、他社の成功パターンを並べて見せても、読者の役には、なかなか立たない。代わりに本誌は、「取り組んでいる」「試している」「観察している」「仮説を立てている」と書く。
二つ目。効率化AI を否定しない。効率化AI は悪いものではない。むしろ正しい仕事である。本誌の主題は収益進化AI のほうにあるが、効率化AI の取り組みも、同じ重みで記録していく。
三つ目。「成功事例集」ではなく、「ケースボックス」を作る。試行、迷い、撤退判断、まだ結論の出ていない領域。これらをすべて、等しく並べて蓄積していく。
四つ目。編集部の視点を隠さない。本誌は中立を装わない。事実は事実として記録し、編集部の解釈は解釈として明示する。両方を読者の前に並べて置く。最後の判断は、読者に委ねる。
本誌の主たる読者は、自社の AI 推進に責任を負う経営者と、その隣で実務として日々支えている方々である。経営者だけではない。役員、事業責任者、新規事業担当者、AI 推進室や DX 部門の部長・課長クラスの方々、コンサルタントやパートナー企業の実務者、研究者、教育機関、業界を観察しているジャーナリストやアナリスト。本誌は、これらすべての読者を、明示的に歓迎する。
収益進化AI の実装は、経営者一人では完結しない仕事である。現場の方が、経営者に「他社でこういう取り組みが始まっているそうです」と伝えに行く。経営者が、現場の方に「あの記事のような取り組みを、うちでも考えたい」と声をかける。そういう社内の動きが立ち上がる経路を、本誌は積極的に作っていきたい。
本誌が目指している価値は、1 記事の影響力ではない。10 年単位の蓄積によって、日本の経営の AI 実装の解像度を、一段押し上げることである。
1 記事を読み終えれば、読者個人の解像度が少し上がる。1,000 記事の蓄積ができたころには、業界全体の解像度が少し上がっているはずである。本誌が積み重ねていくケースボックスは、5 年後、10 年後の経営者にとって、過去の試行錯誤を辿るための貴重な記録になる。誰かが先に試して、躓いて、もう一度立ち上がった軌跡を、本誌は地味に、誠実に、長く積み上げていきたい。
これは派手な仕事ではない。1 年や 2 年で結果の出る仕事でもない。10 年続けて、初めて意味が出てくる仕事である。本誌の編集判断は、常に、この長い時間軸の中で行う。
本誌は、完成した媒体として読者の前に立つつもりはない。読者と共に、毎号、考え直しながら作り続けていく媒体として立つ。本誌の見解に異論があれば、それを表明していただきたい。本誌が間違っていれば、それを指摘していただきたい。
収益進化AI は、まだ答えが出ていない領域である。編集部だけでは、この問いは深められない。読者の皆さん、特に現場で AI と格闘している方々の感覚を、本誌は本気で必要としている。だからこそ、本誌は読者と共に作り続ける媒体として、これから少しずつ、歩み始めていく。
本誌は、取材対象の写真をAIで生成・改変しない。

