空いた時間を、どこへ向けるのか。AX for Revenue Summit 2026 編集部ノート
AX for Revenue Summit 2026 編集部ノート:基調講演・パートナーセッション・地域AX・参加者ワークの記録から

AIで仕事が速くなった。では、その先に何を変えるのか。
2026年8月27日の AX for Revenue Summit 2026 は、この問いを四つの立場から扱った。AIで事業を形にする基調講演、開発会社の現場からのパートナーセッション、自治体の経営を語った地域AXの対談、そして参加者自身のワークである。
本稿は、四つのセッションを一本の線でたどる編集部ノートだ。個別のセッションは、別のケースノートで詳しく扱っている。公開済みの開催レポートから記録を引き、本誌編集部の読みを添える。

この記事の読み方
引用ブロックは、すべて『AX for Revenue Summit 2026 開催レポート』(axfr.ai)から原文のまま引いた。登壇内容をまとめた報告の文章であり、発言の書き起こしではない。
引用の外の文章は、すべて編集部の解釈である。記録と解釈を分けて置く。それが本誌の書き方だ。
出発点の問い
2026年8月27日、東京・京橋のIncubation CANVASで「AX for Revenue Summit 2026」が開かれました。AlphaDriveが掲げたテーマは「AIは効率化から、収益の創造へ」です。事業開発、経営、AI推進などに携わる招待者が集まり、AIによって仕事が速くなった先に、何を変えていくのかを考える場となりました。
いま、調査や文書作成にAIを使うことは珍しくありません。しかし、それによって新しい顧客が見つかったのか、商品やサービスの価値が変わったのかと問い直すと、議論は簡単ではなくなります。便利な道具が増えたことと、事業の売上が増えることの間には、まだ埋めるべき距離があります。
編集部の読み 「便利な道具が増えたこと」と「売上が増えること」の間の距離。サミット全体は、この距離をどう測り、どう縮めるかをめぐって組まれていた。本誌はそう読む。
1. 基調講演:AIを向ける仕事を選ぶ
そのうえで麻生が今回の講演で強調したのは、AIに頼むと、説明だけでなく動くものまで作れるようになったという変化です。AIコーディングの性能が高まり、プログラムを書けない事業担当者でも、日本語で意図を伝えながらウェブサイトやアプリの形にできます。麻生はこれを、2026年に入ってからの大きな転換点と位置づけました。
それに対して、今回の制作にかけた工数は約0.5人月、ひとりで2週間程度だったと説明しました。ここでの「100倍」は、第三者が検証した比較値ではなく、麻生が過去の開発経験に照らして示した、仕事量の変化の目安です。麻生は、同じ成果を100分の1ほどの工数で作れるだけでなく、従来は手を付けられなかったものを大量に作れるようになることも、変化の一つだと話しました。
麻生が繰り返し話したのは、使うAIの種類やプロンプトの巧拙よりも、どの仕事を対象にするかが大事だということでした。
編集部の読み 基調講演の中心にあったのは、速さそのものではなく「選ぶこと」だった。どの仕事にAIを向けるか。その選び方で、得られる変化の大きさが変わる。
記録しておきたいのは、数字の扱い方だ。「100倍」は第三者が検証した値ではなく、講演者自身の概算による目安だと、レポートは明記している。本誌もこの数字を、仕事の大きさを測る物差しとして受け取る。厳密な比較値としては扱わない。
画面が動いたからといって、安全に使える商用サービスが完成したわけではありません。この後のJSOLとのセッションでも、品質、データ、セキュリティ、運用の課題が取り上げられました。
顧客との会話を録音する場合も、事前に許諾を得ることが前提です。持ち帰った生の言葉をAIで文字起こしして整理し、そこから新しい提案を形にします。一方で、相手との信頼関係をつくり、会いに行き、その場で違和感を感じ取る時間は、人が担います。AIで空いた時間をその部分に振り向けることが、事業開発での重要な使い方だと説明しました。
編集部の読み 講演は、作れることの限界も同時に語っていた。動く画面は商用サービスではない。そして、顧客に会いに行き、違和感を感じ取る時間は速くしない。AIで短くするのは準備と整理の時間であり、そこで生まれた時間を人の仕事へ戻す。この順序が、講演全体の骨格だったと本誌は見る。
2. パートナーセッション:作った後に残る仕事
アプリを作る速さは、AIで大きく変わりつつあります。次に問われるのは、それを事業として届けて使い続ける仕組みと、効率化で生まれた時間の使い道です。三尾氏の登壇と麻生との対談は、冒頭の問いに、開発の現場と経営の両面から向き合う時間になりました。
編集部の読み 基調講演が「作れるようになった」側から語ったとすれば、JSOLの三尾幸司氏は「作った後」の側から語った。品質、運用、自社で先に試すこと、そして業務の組み方の見直し。基調講演への対比の視点が、同じ日のプログラムの中に置かれていた。
本誌はこのセッションを、CASE NOTE「作れるようになった後に、何が残るのか。」で詳しく読んでいる。
3. 地域AX:目標は、AIの前からあった
2030年に向けてどんなまちにしたいのか。市長が挙げたのは、安心して暮らせるまちという、AIを使う前からの目標でした。AIは、あくまでその目標に近づくための手段だという位置づけです。
編集部の読み 静岡県磐田市の草地博昭市長の話は、企業のセッションとは違う角度から同じ場所に着いた。目標が先にあり、AIは後から来る。市長自らがAIの責任者(CAIO)を兼ね、人の配置を決める立場からAIを扱っている点も含めて、本誌はこれを経営の話として読んだ。
詳しくは CASE NOTE「AIの責任者を、誰が担うのか。」を参照してほしい。
4. 参加者ワーク:次の30日、誰に会いに行くか
講演と対談に続いて、20分間の「AXFR現在地ワーク」が行われました。参加者には4ページのワークシートが配られ、進行を務めたAlphaDriveグループ執行役員の平尾譲二は、正解を出す時間ではなく、今日聞いた話を自社の次の問いに変えるための時間だと説明しました。
ただし、その工程を速くすることだけが目的ではありません。進行役が続けて尋ねたのは「もしその時間や人手が空いたら、これまで会いに行けなかったどの顧客のところへ行くか」でした。失注した顧客、利用が減った顧客、まだ商品を買ったことのない顧客、これまで営業の対象にしていなかった業界。ワークシートには、そんな具体的な行き先が例示されていました。
編集部の読み ワークの問いは、順番に意味がある。まずAIで速くする工程を選ぶ。次に、空いた時間で会いに行く相手を決める。最後に、そこから持ち帰る情報を決める。
AIの話から始まった一日が、最後は「誰に会いに行くか」という人の行き先の問いで閉じた。この締め方は、サミットの性格をよく表していると本誌は考える。
編集部のまとめ:四つのセッションに共通した問い
一日を通じて、話題はソフトウェアを短時間で形にすることから、企業全体の運用設計、自治体経営、地域の共創へと広がりました。それでも、問われていたことは共通しています。AIで何の時間を短くし、空いた時間をどこへ向け、そこで得た情報や発想をどう顧客価値や売上につなげるのか。
編集部の読み 四つのセッションは、立場も規模も違った。それでも、行き着いた問いは一つだった。AIで生まれた時間と力を、どこへ向けるのか。
そして、その行き先を決めるのはAIではなかった。基調講演では「どの仕事を選ぶか」として、パートナーセッションでは「先に向けたい仕事を決める経営の判断」として、地域AXでは「人の配置を決める首長」として、ワークでは「次に会いに行く顧客」として。どのセッションも、最後の判断を人の側に返していた。
一方で、サミットは答えを配る場ではなかった。参加者が持ち帰ったのは、次の30日の計画を書いた一枚のメモだ。その計画が実際にどう動いたかは、まだ記録されていない。本誌が追うべきは、むしろその先である。
まだ答えの出ていないこと
本誌は成功事例を集めない。集めるのは、試みと判断の記録だ。このサミットから、経営者に返したい問いを五つ置いておく。
- 自社では、AIを向ける仕事を誰が、どんな基準で選んでいるか。
- 作れるようになったものを、事業として届け続ける仕事は誰が担うのか。
- AIで空いた時間の行き先は、効率化の前に決まっているか。
- AIの導入より前に、達成したい目標は言葉になっているか。
- 次の30日、AIで生まれた時間を使って、誰に会いに行くか。
本誌はこの記録をケースボックスに収め、参加企業と自治体のその後を追う。
開示
本誌の発行元である AX for Revenue Institute は、株式会社アルファドライブに属している。同社はこのサミットの主催者である。基調講演を行い、パートナーセッションで対談の相手を務めた麻生要一は、同社の代表取締役社長 兼 CEO/CAXO で、本誌の編集主幹でもある。地域AXの聞き手を務めた宇都宮竜司と、参加者ワークを進行した平尾譲二は、同社グループの執行役員である。
本稿は主催者側に属する媒体が書いた振り返りであり、その立場から自由ではない。基調講演の数字に第三者の検証がないことを明記し、基調講演への対比となるパートナーセッションの論点を併せて記録したのは、そのためである。
出典
『AX for Revenue Summit 2026 開催レポート』AX for Revenue Institute(axfr.ai、2026年10月公開)
https://axfr.ai/blog/ax-for-revenue-summit-2026-report
関連:
- 本誌 CASE NOTE「AIの責任者を、誰が担うのか。」 https://journal.axfr.ai/articles/case-note-iwata-caio
- 本誌 CASE NOTE「作れるようになった後に、何が残るのか。」 https://journal.axfr.ai/articles/case-note-jsol-customer-zero
- AX for Revenue Summit 公式サイト https://summit.axfr.ai/
